強すぎる彼女と優しすぎる彼
朝早く、新しい家のベランダから佳子は景色を見ていた。
今まで住んでいたところとは空気すら違って感じる。

今まで一緒にいた家族や仲間、友人との世界とも遠くなってしまったように感じていた。

「風邪ひくぞ」
佳子を後ろから抱きしめた龍仁はその体の冷たさに驚いた。
「いつからいたんだよ」
少し不機嫌にそういうと龍仁は佳子の手を引いてリビングへ向かい温かいお茶を淹れて佳子に渡した。

「佳子。」
「ん?」
「昨日は言わなかったけど」
何かを言いかけた龍仁の言葉を佳子はさえぎった。「言わないで」と。
< 88 / 198 >

この作品をシェア

pagetop