My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

3.秘密の部屋


 状況が飲み込めず呆然としている私に「お父さん」と呼ばれた彼が口を開く。

「子供達を助けてくれたこと、礼を言う」

 それはとても低く、耳に響く声だった。
 そして座ったままの私にその大きな手を差し伸べてくれた。
 私はおずおずとその手を取って立ち上がる。
 ゴツゴツとした硬い皮膚。……でも、温かかった。

「あ、ありがとうございます」

 姿勢を正してお礼を言うと、彼の感情の読みにくい細い目が少し和らいだ気がした。

「良かったねお姉さん! お父さんすっごく強いからもう大丈夫だよ!」

 あの時の少年がお父さんの足元で得意そうに言う。蹴られたお腹はもう平気なのだろうか。
 すると白髪の少女が後ろから軽くその頭を小突いた。

「違うでしょ、ラウト。まずはお礼を言いなさい」
「あ、そうだった! お姉さん、さっきはありがとうございました!」

 元気いっぱいの笑顔で言われ私の心はほんわか温かくなった。
 続いて少女が私をまっすぐに見上げた。その瞳はやはり赤い。

「本当にありがとうございました。見ず知らずの私達に……。そのせいで貴女が大変なことになってしまって」
「ううん! こっちこそ助けてくれてありがとう!」

 私が両手を振りながら二人に言うと、彼らはまたにっこりと笑ってくれた。

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