My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
と、こちらに近づいてくる足音に気づき私は顔を上げる。
「全くお前は……いきなりいなくなるな! 何処見て走ってやがったんだ!」
いつもの怒声が頭上から降ってくる。
でも不思議と、今はそれが怖く感じなくて……。
「無事で良かったじゃないか。そんなに心配なら手でも繋いでいろ」
その隣に立つセリーン。
まさか、もう一度会えるとは思っていなかった。
私が“銀のセイレーン”だと知っても、全く変わらないその態度がとても嬉しくて……。
「だ、誰も心配なんか……って!? お、お前また……っ!」
何より二人が並んだ姿を見て、一気に気が緩んでしまったみたいだ。
いつの間にか私の両目からはぼろぼろと涙がこぼれていた。
「貴様が頭ごなしに怒鳴るからだ。一人で不安だったろうに……」
慌てて涙を拭おうとする私の頭をセリーンが優しく撫でてくれた。
バツが悪そうに舌打ちをするラグ。
「違うの、ごめん。急に安心しちゃって……、でもどうして? どうやって会えたの?」
私はどうにか涙の止まった顔を上げて二人に訊く。
するとラグの表情がぴくりと歪んだ。
「……あの野郎だ」
「え?」
「エルネストという男が私の前に現れたんだ」
「エルネストさんが……!?」
その名前を聞いた途端、ドキリと胸が高鳴る。
と、ラグが気分悪そうに私の横を通り過ぎ、親子の入っていった細い道へ足を踏み入れた。
「ついて行くのか?」
「奴ら闇の民がどうやってこの国に入ったのか知りたい。……この辺りにも詳しそうだしな」
そう言うラグに私も続き、セリーンがその後ろについた。
この、もう決まったかのような順番が私をひどく安心させた。