My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
尤もな疑問だ。いくら子供達を助けたからと言って、こんな秘密を会ったばかりの私達にばらしてしまって良いのだろうか。
だがお父さんは「下で話す」と言ったきり口を開かなかった。
ラグは短く息を吐いてから穴に近付きその中を覗き込んだ。そしてこちらを振り向き言う。
「セリーン、そいつを頼んだぞ」
「あぁ」
――ラグはまだお父さんを警戒しているようだ。
彼はセリーンが頷くのを確認すると子供達と同じように地下へと下りていった。
私は穴に近づきそれを見下ろす。
下は更なる闇が広がっていて、ラグがその中に呑まれていくようでごくりと喉が鳴ってしまった。
だが丁度その時下がぼんやりと明るくなった。
子供達が灯りをつけたのだろう。私は少しホッとする。
ラグが階下に下りきるのが見えた。その部屋を軽く見回してからこちらを見上げる。
「いいぞ、下りて来い。落ちるなよ」
「う、うん」
私は十分に注意しながら梯子に足を掛け下りていく。
見るとその梯子は随分と錆び付いていた。
大分前からここに取り付けられていたのだろう。
折れないことを祈りつつ、私はどうにか地下に下り立った。
そこは上の部屋と同じくらいの広さがあった。
しかし床も壁も上とは違って土がむき出しだ。
そして上には無かった家具がいくつか置かれていた。
天井まである木棚。そしてテーブルと椅子。どれも酷く埃っぽい。
テーブルの上には火のついた蝋燭が置かれていて、子供達の影がゆらゆらと揺れていた。
その地下室は外と同じ潮の香りがした。