My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
――そういえば、セリーンは小さなラグと同じ年頃のこの少年には興味がないのだろうか。
ふと気になって背後のセリーンを見ると、ばっちり目が合ってしまった。
「ん? なんだ?」
「ううん! な、何でもない」
と、梯子から下りたお父さんにラグは再び訊く。
「で、オレ達に何の用だ。ただ礼がしたいってわけじゃねーんだろ?」
彼の、目上の人に対しても全く変わらないその失礼な物言いにハラハラする。
だがお父さんは無言でその漆黒の瞳をお姉ちゃんの方へと向けた。
その視線を受けたお姉ちゃんの赤い瞳が私達を見つめる。
「私が、全てお話します」
小さく驚く。その真剣な表情は先ほどまでの“少女”のものではなかった。
そこには思わず息を呑む、威厳のようなものが確かに在った。
「申し遅れました。私はライゼと申します。弟のラウトと父のヴィルトです」
「あ、私は華音です」
なんとなく吃ってしまった。
彼女の瞳が私だけに向けられる。
「カノンさん……。貴女が“銀のセイレーン”」
その目が眩しそうに細められたのを見て、私はなぜか緊張を覚えた。
そして、彼女――ライゼちゃんの次の言葉で私は更に驚くことになる。
「私は、私達は貴女に会いにこのランフォルセまで来たのです」