My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
私はドキリとする。
背後でセリーンが剣に手を掛けるのがわかった。
「ですが、今は違います! カノンさんに会ってわかりました。“声”が私に何を伝えたかったのか」
ライゼちゃんの声が興奮したように高くなる。それは、悲痛な叫び声のようにも聞こえた。
「貴女なら、皆の荒んだ心を変えられる! あのグラーヴェ兵を見て確信しました。どうか! フェルクレールトの皆を助けてください!!」
地下室に反響した彼女のその強い願いに、私は束の間言葉を無くす。
でも、気持ちが次第に高ぶっていく。
――私に、本当にライゼちゃんの言うような力があるかはわからない。
でもひとつだけ、自信を持って言えることがある。
それは私が、歌が好きだということ。
歌は人を楽しませてくれる。勇気付けてくれる。そして、時には慰めてくれる。
そんな“歌”を不吉だというこのレヴール。
この世界で本当に歌が必要とされているなら。
もし彼女の言う通り、本当に私の歌でフェルクレールトの皆を助けられるのなら……。
「私、」
「冗談じゃねぇ」
私が上ずった声を上げると同時、隣のラグが吐き捨てるように言った。
――え?
皆の視線がラグに集まる。