My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「闇の民を助ける? そんな大層なことコイツに出来るわけねぇだろ。まだ歌を使いこなせてもいねーんだ」
「うっ」
痛いところを突かれ、高揚した気分が一気に萎んでいく。
……悔しいけれど、ラグの言うことは尤もだ。
歌いたい気持ちはあっても、その度に動けなくなっていたのでは結局また周りに迷惑をかけてしまう。
やはり今の私には、重過ぎる話なのかもしれない。
「ですが“声”は……」
「それにな、フェルクレールトまで一体どれだけかかると思ってんだ」
そうだ。ライゼちゃん達が住む国はずっと南の方にあると言っていた。
ここからどのくらいの距離があるのだろう。
そしてこの世界の船は一体どれくらいの速さで進むのだろうか。
私には検討がつかなかった。
「やっぱ一週間以上かかっちゃう?」
「アホか。軽く一月はかかる」
「一月!?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
改めてその遠さを知って、私はライゼちゃんに視線を戻す。
(そんなに遠くから、銀のセイレーンに会いに……?)
最初は消すのが目的で、と言っていたけれど、余程の覚悟がなければこんな遠い地まで来ようなどと考えないだろう。
「貴様が術で帆に風を送ればもっと早く進めるのではないか?」
セリーンの提案に私ははっとする。
「そうだよ! その手が――」
「ふざけんな。お前の前じゃもう術は使わないって言ったはずだ」
「だが、」
「そのことについては問題ありません」
ライゼちゃんが微笑を浮かべ言った。