My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「そうだ、ライゼちゃんはエルネストさんっていう人知らない?」
私が訊くと、ライゼちゃんが首を傾げた。
「エルネストさん、ですか?」
「うん。金髪の、綺麗な男の人なんだけど……」
だがライゼちゃんは申し訳無さそうに首を横に振った。
私はそう簡単には行かないかと小さく溜息を吐く。
と、ラグがいつものように不機嫌そうに舌打ちをした。
「長居する気はないからな。無理だってわかったら即諦めろよ」
「うん!」
「大丈夫です。カノンさんのあの歌声ならきっと、フェルクの皆の心も変えられるはずです!」
自信満々に言うライゼちゃんに私はまたも恥ずかしくなって照れ笑いをした。
その横でラグが呆れ果てたように言う。
「ったく、あの歌がそんなに良かったか? オレには全く理解できないね」
「何を言う。貴様だってあの時しっかり聴き惚れていたではないか」
「なっ!?」
(え?)
背後からの冷静な言葉に、ラグの顔が真っ赤に染まった。