My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
それは蝋燭の明かりのせいではない。……はっきりと、赤。
私は、ラグが私の歌にどうこうよりも、その反応の方が意外で思わずポカンと彼を見上げてしまった。
真っ赤な顔のまま、ラグは後ろを振り向き怒鳴る。
「な、何言ってやがる! 適当なこと抜かすな!!」
「適当なことではない。あの歌にはそれだけの力があった。貴様も私と同じようにあの時動けなかったはずだ。……でなければ、もっと早く助けに入れた」
目を伏せ追い討ちをかけるように言うセリーン。
ラグの体が小刻みに震えている。
――言われてみれば、あの歌を歌っている数分間、ラグにはいつでも私を止められたはずだ。それなのに、彼が私の元に来たのは最後までしっかりと歌い終えてからだった。
言葉を無くしたらしいラグは、私を見ようとはせずに勢い良くライゼちゃんたちの方を振り返った。
「で? どうやってフェルクレールトまで行くんだ!? 行くならさっさと案内しやがれ!」
先ほどとは打って変わって行く気満々のラグに、私は思わず噴き出してしまったのだった。