My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
5.飛翔
ぴちゃん……ぴちゃん……。
足音の他に響くのはそんな水滴の落ちる音と低い潮騒だけ。
私達総勢6人は、潮の香りが充満する湿気た洞穴を一列になって進んでいた。
はりきって先頭を行くラウト君が手にする松明の灯りだけが頼りの穴の中は、二人がどうにか並んで歩ける程度の幅しか無く、天井も私が背伸びをして手を伸ばせば届く高さにあった。この中で一番背の高いヴィルトさんは若干屈み気味に進んでいる。
足元も壁も酷くぬかるんでいて気をつけていないとすぐにでも滑って転んでしまいそうだ。
(それにしても凄いなぁ)
息を吐きながら視線を巡らせていると、
「おい、ちゃんと足元見て歩けよ。また転ぶぞ」
そうラグに釘をさされてしまった。……実はつい先ほど危うく転倒しそうになったところをセリーンに支えてもらったばかりだ。
そのまま転んでしまっていたら今頃服はドロドロになり非常に情けない思いをしていただろう。
「しかし良くこんな長い穴を掘ったものだな」
背後のセリーンが感心したように呟いた。
(ホントだよね……)
私も何度目かの感嘆の息を漏らした。
なんとあの地下室には更に隠し扉があり、そこがこの洞穴への入り口になっていたのだ。
この洞穴は闇の民が戦争時代に掘ったものなのだそう。
あの地下室は当時使用されていた偵察基地だったらしい。
ライゼちゃん達の話によると、この洞穴は港から完全に死角になった場所に通じているのだという。
詳しくは行けばわかるとラウト君がまた得意げに笑って教えてくれた。
この洞穴がどれだけ前に掘られたものかはわからないが、このランフォルセの人たちが未だに気づいていないのだ。余程わかり難くなっているのだろう。
そしてそこにライゼちゃん達がこの地に3日でやってきたという乗り物があるのだそうだ。
「もうかなりの距離進んだだろう。まだ着かないのか?」
ラグがイラついたように前を行く3人に訊いた。