My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
私もそろそろ限界に来ていた。この圧迫感の中かれこれ一時間以上は進んでいる気がする。
とうに方向感覚は失われていた。今自分達はルバートのどの辺りにいるのだろう。いや、まだルバートにいるのだろうか……?
「もうすぐだよ。もうすぐしたら出口だから頑張って!」
無邪気な声で応援されて、流石のラグも小さく舌打ちしただけでそれ以上は何も言わなかった。
そして、それから更にどのくらい進んだだろう。
「出口だ!」
ラウト君の歓声が洞穴内に響いた。
その直後、目の前が真っ暗になる。
「や、やだ!」
私は驚いて悲鳴を上げる。
すると前方からライゼちゃんの怒った声が聞こえてきた。
「こらラウト! 下りる前に松明渡しなさい!」
「あ。ごめん、忘れてた!」
そして再び視界は明るくなった。
松明がライゼちゃんからヴィルトさんに渡る。
「気を付けろ。そこまで高くはないが、ここには梯子がない」
ヴィルトさんがこちらを振り向き教えてくれた。
と、ライゼちゃんの姿が消え、タっという足音が聞こえた。
次にヴィルトさんが消え、瞬間また暗くなったがすぐに松明の灯りで穴の中を照らしてくれた。
ヴィルトさんの頭が私達の腰ほどの位置にあった。
穴の向こうはまだ外ではないようだ。
しかしかなり広くなっているようで、ライゼちゃんとラウト君の話し声が反響していた。
「お待たせー! 寂しくなかった?」
「遅くなってごめんなさい」
何やら二人して誰かに話しかけているようだが……。
疑問に思っていると、いつの間にかラグが目の前からいなくなっていた。
「ほら、早く来いよ。支えてやるから」
「う、うん」
私は伸ばされた手を取ってそこから飛び降りる。