My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 足が着いたのは土ではなくゴツゴツとした岩肌。
 ラグから手を離し2歩ほど進んでから私はまた感嘆の声を上げた。
 そこはおそらく自然にできた洞窟だった。
 天井は高くドーム状になっていて、広さも学校の教室ほどあった。
 そして向こう、ぽっかりと空いた岩の隙間から夜の海が覗いていた。月が出ているのか海面が波に揺れキラキラと輝いている。
 そんな幻想的な風景につい見とれてしまった。――のも束の間、背後でセリーンの足音がして、ヴィルトさんが持っていた松明をこちらへ向けた瞬間、

「ひゃあああぁぁ!!?」

私は思わず悲鳴を上げてしまっていた。

 ライゼちゃん達の前でとぐろを巻き、どっかりとそこに寝そべっていた“それ”。
 “それ”は、大きな大きな白い“蛇”だったのだ。
 しかも、ただの蛇ではない。
 大きさもそうだが、その背には胴と同じ真っ白な翼が生えていた。
 その翼は鳥のそれではなく、ゲームなどに登場する“ドラゴン”の翼に近かった。

 背後で金属音が聞こえた。
 おそらくセリーンがその背の剣を抜いた音。
 見るとラグもいつでも抜けるよう腰のナイフに手を触れている。
 そう、どう見ても“それ”はモンスターだった。
 この世界に来てから何種類かのモンスターを見てきたが、こんなに大きなモンスターには遭った事がない。

 白蛇はゆっくりとその頭をもたげ、そんな私たちの方を見据えた。
 それだけでライゼちゃんたちの背を軽く超してしまい、瞬間二人ともそのまま食べられてしまうのではないかと思った。

 私は震える足でラグの後ろへ回る。
 なのに至近距離にいるライゼちゃんたちは全く恐れている様子が無い。
 それどころかライゼちゃんはまるで馬にするように、その白蛇の首を撫でていた。

「大丈夫です。彼女は人を襲ったりはしません」

 にっこり笑って言うライゼちゃん。

(か、彼女……?)
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