My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
間違いなく、それはブゥのことだ。いつからバレていたのだろうか。
私は驚くと同時、後ろのセリーンのことが気になった。
彼女にはまだ、ブゥのことを話していない。
「その子なんていうの? 名前あるんでしょ?」
目を輝かせてこちらに近寄ってくるラウト君。
「ねぇ、いつになったら起きるの?」
「こ、こいつは……」
ラグもちらちらと横目で背後を気にしている。
と、セリーンがそれに気づいたのか、小さく溜息を吐いた。
「なんだ? もしかして私が気づいていないとでも思ったか?」
呆れたように言うセリーンにラグは拍子抜けしたような、なんとも複雑な表情をした。
私もきっと同じような顔をしていたのだろう。セリーンが面白がるような瞳で私を見た。
「私が切りかかるとでも思ったか? モンスターだからと言って人に危害を加える者ばかりではない。それは誰もが知っていることだ。……まぁ、名前まで付けて可愛がっている人間は、そうはいないがな」
「ぐっ……」
顔を引きつらせて言葉に詰まるラグ。
(ひょっとして、ラグがブゥのことをセリーンに黙ってたのは、モンスターと仲が良いってことを知られたくなかったから……?)
「ねぇお兄さん! その子、何て名前?」
と、ラウト君がこちらの会話などお構い無しにラグの服をぐいぐいと引っ張っていた。
「こ、こいつは……ブゥだ。ブゥ、もう起きていいぞ」
その半ばヤケクソ気味な声にブゥがすぐに反応する。
ゆっくりと状況を確認するように翼を広げ、ラグの髪の毛からふわりと飛び立った。
「ぶ?」
ブゥはまるで「いいの?」とでも言っているかのようにラグの周りをゆっくりと旋回した。
「うわぁ、可愛い! ブゥっていうんだ! ブゥ、おいで!」
ラウト君はブゥを捕まえようと両手を伸ばした。
だがブゥはその手から逃げるようにしてラグの頭の上に乗ってしまった。