My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「ラウト、その子怖いって。もう少し慣れてからにしなさい」
「はーい」
ラウト君は羨ましそうにラグの頭上を見ながらライゼちゃんとビアンカの元へ戻っていった。
「アンタ、もしかして……こいつの言ってること、わかるのか?」
ラグが言いにくそうにライゼちゃんに訊ねた。
その声には驚きと共に期待が込められているように聞こえた。
それはそうだろう。誰だって自分が可愛がっている動物の声を聞くことが出来たら嬉しい。
私はそんなラグの横でこっそりと微笑んだ。
「はい。大抵のモンスターの声は聞こえます。それが神導術士の力ですから。その子は、とても貴方のことが好きなようですね」
ライゼちゃんはなぜか悲しそうにブゥの方を見つめて続ける。
「元々、術士は万物に好かれる存在です……。それを、その力を、あなた方魔導術士は、……いえ、すみません。今此処でする話ではありませんね。失礼しました」
ライゼちゃんが申し訳無さそうに瞼を伏せた。
――瞬間ドキリとした。
ライゼちゃんのその言い方は、ラグを――魔導術士を酷く嫌っているように聞こえたから……。
最初に二人が顔を合わせたときもそうだった。ライゼちゃんはなかなかラグと目を合わせようとはしなかった。
同じ術士でも、ひょっとして“魔導術士”と“神導術士”は仲が悪いのだろうか。
ライゼちゃんのその魔導術士を非難するような言葉に、なぜかラグは何の反応も示さなかった。彼のことだから、何か言い返すかと思ったのだけれど……。
その横顔からは何の感情も読み取れなかった。
「で、どうするんだ? カノン」
セリーンに言われ、私の思考は一旦途切れる。
そうだ。今はまずビアンカに乗ることを考えなければならない。
ラグとライゼちゃんの間に流れる不穏な空気のわけは激しく気になるけれど、訊ける雰囲気ではない。