My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「えっと、その……ビアンカ? 落ちたりしない?」
彼らからしたら随分マヌケな質問だったかもしれない。
でもライゼちゃんはにこりと笑って答えてくれた。
「大丈夫です。鱗をしっかりと握っていれば落ちたりしません」
「う、うろこ……」
「それに、万が一落ちてもビアンカはすぐに対応してくれます」
ライゼちゃんの笑顔に私は空笑いで応える。
と、ラウト君が私達の間に割り込むかたちで口を開いた。
「お姉さん、高いところ平気?」
「え? うん。まぁ……」
「なら大丈夫だよ! 風がとっても気持ち良いんだよ!」
確かに、高いところが苦手な人だったら絶対に無理だろう。
その後ラウト君は同じことをラグとセリーンにも訊いた。
セリーンは「平気だ」と一言。
先ほどビアンカに対してあんなに否定的だったラグも溜息を吐きつつ頷いていた。
ブゥのことを出され、文句を言い辛くなったのか、それとも……。
「良かった! ……じゃあ、ダメなのお父さんだけだね」
「え!?」
何気なく出たラウト君の言葉に私は思わず大きな声を上げてしまい、慌てて口を塞いだ。
ちらりと背後を見ると、すでにヴィルトさんは気分悪そうに口元を押さえていた。
……人は見かけによらないとはこのことだ。
「父さん、大丈夫?」
「…………」
娘であるライゼちゃんに気遣われ、ヴィルトさんは無言でゆっくりその手を離した。
失礼な話だが、そんな彼の姿を見たら急に私の中に勇気が湧いてきた。
(ヴィルトさんごめんなさい。でも、ありがとうございます!)
そう、心の中で呟いてから
「ビアンカ。よ、よろしくね!」
精一杯の笑顔で――かなり引きつっていたかもしれないが、ビアンカに声をかけてみた。
すると彼女は、返事するように蛇特有のあの割れた赤い舌をチロリと出した。