My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
(な、なんか緊張してきた……)
「あそこに見えるのが私達の家です」
ライゼちゃんが指差したのは灯りのある方ではなく、森の方だった。
確かに、そこには上空からでないとわからないような、円錐状の高いテントらしきものが見えた。
そして、ビアンカは木々の合間を上手く縫うようにして静かに森の中に着地したのだった。
虫の声が煩いくらいに響く鬱蒼とした森の中。
高い木々によって月明かりは遮られ、辺りは気味が悪いくらいに真っ暗だった。
私達はライゼちゃんたち姉弟に案内され、先ほど見えたテントに向かっていた。
湿気を帯びた、むっとした暑さに服の下がすぐに汗ばんでくる。
元々涼しそうな格好のセリーンが羨ましかった。ラグはさっさと上着を脱いで腰に巻き付けている。
ヴィルトさんは私達の後ろをゆっくりと歩いていた。
暗いせいでその表情はわからなかったが、家に着いたらすぐにでも寝込んでしまいそうだなと、私はこっそり苦笑した。
そんな私達の横をビアンカの体がズルズルと這い進んでいる。先ほどまでその上に乗っていたとはいえ、改めてその大蛇の姿を見てゴクリと喉が鳴ってしまった。
と、先行くライゼちゃん達が足を止めた。
まだテントは見えないのにと疑問に思っていると、その場にぽっかりとほら穴が開いているのに気がついた。