My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 突然のことに対応できるわけもなく、私はそのまま地面にカッコ悪く倒れ込む。
 同時、トスッという音が聞こえた気がした。

「な、何?」
「起き上がるな!」

 鼻を押さえながら体を起こそうとすると、ラグに怒鳴られた。
 さっき突き飛ばしたのもおそらく彼だろう。
 彼は素早くナイフを抜き、セリーンもすでに大剣を構えていた。
 何事かと先ほど音のした方を見上げて、私は目を見開く。

 私が今さっき立っていた場所近くの木に、「矢」らしきものが突き刺さっていた……!

「誰です!?」

 夜の闇に凛と響く声。――ライゼちゃんだ。
 矢の飛んできた方向を鋭く見据えるその表情は威厳に満ち、先ほどまでの可愛らしい少女の顔ではなくなっていた。
 ラウト君も驚いた顔でそんなお姉ちゃんを見上げている。

 私は屈んだまま目線だけを真っ暗な森の方へと向けた。
 茂みの向こうで人影が動いた。
 そして現れた人物にライゼちゃんは驚きの声を上げる。

「ブライト!」

 ライゼちゃんの動揺したような顔を見て私はもう一度彼を見上げる。

(ライゼちゃんの知り合い……?)
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