My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
ブライトと呼ばれたのはライゼちゃんと同い年くらいのひょろっとした少年だった。
ラウト君やヴィルトさんと同じ褐色の肌に黒い髪。彼はその長い髪を後ろで一つに編んでいた。
その手に弓を握り締め気まずそうにライゼちゃんを見つめていたが、思い切ったように口を開いた。
「ライゼ様、一体どこに行ってらっしゃったのですか! この者たちは何者です!?」
私達の方を指差しながらまくし立てる少年を、ライゼちゃんはまっすぐに見返す。
そこにもう動揺の色は見えなかった。
「彼らは私の恩人です」
「恩人……? どういうことですか! 何も言わずに出て行かれて、私がどんなに心配したか!」
「心配を掛けたことは謝ります。ですが、いきなり矢を放つとはどういうことです」
怒りを含んだその声に、少年の方がたじろいだ。
溜息を吐きナイフを仕舞ったラグを見て、私はゆっくりと起き上がる。
多分、もう攻撃されることはないだろう。
セリーンもまだ剣を鞘に戻すことはなかったが、安堵した表情で彼らのやり取りを見つめていた。