My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

「その者たちが、ライゼ様を連れ去ったのだと……思ったのです」

 明らかにしどろもどろになって言う少年。
 ライゼちゃんは小さく息を吐くと、私達の方を向いた。

「大変失礼いたしました。カノンさん、お怪我はありませんでしたか?」
「うん、大丈夫。……えっと、彼は?」
「彼は私の幼馴染で、ブライトと言います」
「幼馴染……?」

(それにしちゃ、言葉遣いとかやたら他人行儀な気が……)

 ライゼちゃんは神導術士として、このフェルクの人たちに大切にされていると言っていた。だからなのだろうか。

「ライゼ様、まだ私の話は終わっていません。今まで一体どこに行ってらっしゃったんですか。それにその格好は……」
「ブライト、この方々は長旅で酷くお疲れです。早く休ませてさしあげたいのです。詳しい話は明日します」
「は!? ま、まさかライゼ様の家に泊めるおつもりですか!?」

 彼、ブライト君の声がひっくり返る。信じられないといった顔だ。……と、

「ブライト、明日また来るんだ」

有無を言わさないような低い声の主はヴィルトさんだ。

 先ほどまで今にも倒れてしまいそうだったのに、今の彼はそんなこと微塵も感じさせないほどの威圧感があった。
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