My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「じゃあ姉ちゃん、また明日ね。おやすみなさい! お父さん行こう!」
ラウト君に手を引かれながらヴィルトさんがそちらに足を向けた、そのとき。
「父さん、ラウト! 本当にありがとう!」
ライゼちゃんが笑顔で言った。
ラウト君は振り返ってにーっと笑い、ヴィルトさんもふっと表情を和らげる。
次いでこちらに背を向けたラグを私は慌てて呼び止めた。
「あ、ラグ!」
彼は相変わらず不機嫌そうにこちらを振り返る。
私は小走りで彼の元へ行き、皆には聞こえないよう声をひそめて言った。
「あのね、お願いがあるの。皆が寝た後でまたここに出てきてもらってもいい?」
「……あぁ」
「ありがとう! じゃあねブゥ!」
「ぶっ」
怪訝そうに眉根を寄せながらも頷いてくれたラグに満足し、私はセリーンたちの方に戻った。
――ビアンカに乗っている間、ずっと考えていたことがある。
私は気を引き締めて、そのときを待つことにした。