My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
7.清めの泉
テントの中は厚手の幕によっていくつかの部屋に仕切られているようだった。
勿論エアコンが効いているわけもなく、外と変わらないむっとした熱気に流石に耐えられなくなって訊く。
「ライゼちゃん、その……身体を洗うときっていつもどうしてるの?」
お風呂はないだろうが、せめて水浴びがしたかった。
「そうだな、私も汗を流したいが」
セリーンも汗で額に張り付いた前髪を払いながら言う。
「あぁ、気が利かず申し訳ありません。私はいつも少し行った先にある泉で身を清めています。すぐにご案内しますね」
(やった!)
私は心の中で歓声を上げた。
「うわぁ、キレイ!」
その泉は森の中に隠れるようにひっそりと存在していた。
星空を映した水面が時折キラキラと輝きながら風に静かになびいている。
流石に温泉というわけにはいかなかったが、この暑さなら水風呂でも風邪をひく心配は無いだろう。
「モンスターは出ないのか?」
セリーンが注意深く辺りを見回しながら訊いた。
確かに水浴びの最中モンスターに襲われたら最悪だ。