My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
私はお腹の辺りの余計なお肉を指でつまんでみる。
それでも、この世界に来てから確実に体重は減っているはずだ。
(帰れる頃には私もスタイル良くなってたりして。そしたら皆に自慢しちゃお! ……帰れる、よね?)
――気付けば、もうこの世界に来て半月が経とうとしている。
お母さん、お父さん、学校の友達、きっと皆心配しているだろう。
そんなことを考えていたら、不覚にも視界が潤んできてしまった。
私は勢いつけてザバンっと頭まで泉に浸かる。
「どうした?」
顔を出すとセリーンとライゼちゃんが不思議そうにこちらを見ていた。
「ううん、なんでもない! 気持ち良かったからつい!」
慌てて笑顔で言うと、ライゼちゃんが可笑しそうにクスクスと笑った。
「カノンさんは本当に、私の想像していた“銀のセイレーン”とは違っていました」
「あっはは。それ、ラグにも良く言われるんだ。『お前、本当に銀のセイレーンか?』って」
私がラグの真似をしながら言うとライゼちゃんが首を横に振った。
「いいえ。私は心から、カノンさんが銀のセイレーンで良かったと思っているんです。明日から宜しくお願いします」
どきりとする。