My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
結局、沈黙に耐えられなくなったのは私だった。
「そういえば、ラグはお風呂どうしてるんだろ。あっちの家にはお風呂あるの?」
話題を変えるために、何気なく言った言葉だった。
だが、ライゼちゃんは急に焦ったように立ち上がった。
「そ、そうでしたね。そろそろ出ましょうか。ひょっとするとラグさんも此処へ入りに来るかもしれません」
「え、えぇ!?」
私は思わずまた大きな声を出してしまった。
(そ、それはマズいよ……!)
ラグもフェルクに着いてからずっとこの暑さを気にしていた。
私達と同じようにこの泉の場所を聞いて来る可能性はすこぶる高い。
私はそそくさと泉から上がると、ライゼちゃんが貸してくれたこの国の服を素早く着込んだ。
セリーンもライゼちゃんも続いて泉から上がる。
私達はそれぞれ今まで着ていた服を泉で簡単に洗い、テントに戻ることにした。
心地よい程度に冷えた身体と風通しの良い服のお蔭で、帰りの道のりは行きに比べかなり快適だった。
だが途中、こちらに歩いてくるラグの姿に気付いて違う意味で汗が噴き出した。
「ラ、ラグ達も泉に行くの?」
「ぶぅ!」
頭に乗ったブゥが嬉しそうに答えてくれた。