My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
ラグはなぜかこちらから視線を逸らして言う。
「……こっちでいいんだよな」
「うん、ここまっすぐ行ったとこ。すっごい気持ち良かったよ!」
私は内心の動揺を悟られないよう笑顔で答える。
と、後ろでセリーンがふっと笑った気がした。
「運の無い男だ」
「あ?」
「もう少し早ければもっといいものが見られたのになぁ」
「セリーン!?」
ラグは初めその意味がわからなかったのか思いきり眉根を寄せていたが、すぐに気づいたようだ。
「いつ来ようがオレの勝手だろうが! 知るかっ!」
そう怒鳴って私達の横を通り過ぎていく。
「一緒に入りたければあの子の姿で来るんだな」
セリーンの冗談なのか本気なのかわからないセリフを思いっきり無視して、ラグはさっさと泉の方へ消えてしまった。
思わず安堵の溜息が漏れる。
折角さっぱりしたのに、なんだか変な汗をかいてしまった。