My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
ラグはそんな私を半眼で見下ろしていたが、少しして小さく溜息を吐いた。
「そうだな。お前が歌を使いこなせるようにならねーと、こっちも困る」
その言葉にほっと胸を撫で下ろす。
「ホント? ありがとう!」
「……だが、なんであいつらには内緒じゃなきゃいけねーんだ?」
「え、その、……何か練習見られるの恥ずかしかったから」
また降ってくる盛大な溜息。
「なら、場所を変えるんだな。ここで歌ったらすぐにバレるだろ」
「あ、そうだよね。どこにしようか……。あっ、じゃぁさっきの泉のとこ!」
そうして、私達二人は先ほど行った泉へ向かうことにした。
――そういえば、こうしてラグと二人きりになるのは久し振りな気がした。
(ん? いつもはブゥがいたから、ホントの二人きりは初めてになるのかな?)
ブゥは今森の中をお散歩(お食事?)中のよう。
そう思ったら、少し緊張してきた。
先生になって欲しいなんて頼んでしまったけれど、彼はどう見ても優しく教えてくれるタイプではなさそうだ。
(……あんまり怖かったら、小さくなってもらお)
私はそんなことを考えながら、ラグの背中を追った。