My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「せ、戦争はどうしようもないと思うの! 誰が悪いとか、誰が偉いとか私はそんなもの無いと思ってるの! ……おばあちゃんがいつも言ってた。戦争は、誰もが被害者になるんだって」
それは、私のおばあちゃんの口癖だった。
おばあちゃんは戦時中に、家族や旦那さん……私のおじいちゃんを亡くしている。
でもだからと言って誰を責めるわけでもなく、テレビなどで戦争のニュースが流れるたびに悲しそうに繰り返していた。
『華音、戦争はね、誰をも被害者にして、誰も幸せにはしないんだ』
私はその時代を知らない。
そしてこの世界の、ラグの言う戦争なんてもっと知らない。
……魔導術士が何をしたのかも……。
そんな私がこういうことを言うのは、間違っているのかもしれないけれど。でも――。
「だから! 私はラグも、ライゼちゃんも、両方好き!」
一気に喋ったせいで少し息の上がった私を、ラグはしばらくポカンと見ていたが、次第にその顔が赤くなっていくのがわかった。
(あ、あれ?)
彼は耳まで真っ赤になったその顔を腕で隠し怒鳴る。
「お、お前は! そういうセリフを恥ずかしげも無く言うな!! こっちが恥ずかしくなるんだよ!」
……恥ずかしい?
今度は私がポカンとする番だった。
私は今、自分的には結構真剣なつもりで、別に恥ずかしいことを言ったつもりは全く無かったのだけれど。
ラグはもう一度わざとらしく咳払いをしてから、まだ赤い顔で私を見下ろした。
「もうその話は終わりだ。術のコツを教えるぞ!」
「は、はい!」
――可笑しかった。
いつもみたいに怒鳴られているのに、そのいつもの彼を見て、酷くホっとしている自分がいた。