My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
優しくて、強くて、歌が大好きだったおばあちゃん。
共働きの両親に代わって、いつもそばにいてくれた。
私のことをとても可愛がってくれた。
そして、私にたくさんの歌を教えてくれた。
――水面に映った銀色の髪がぼやけて霞んでいく。
今はもう、お礼を言うことは叶わないけれど。
大好きだったおばあちゃんへ、感謝の気持ちを込めて私は歌った。
「はぁ……」
最後まで歌い終えて、一息つく。
心地よい気だるさが全身を包んでいた。
少し眩暈はしたけれど、立っていられない程ではない。
私はいつの間にか頬に伝っていた涙を拭って、ラグの方を見る。
「ね、立っていられるよ! 出来たかな!」
「あ? ……あぁ、そうだな」
はっと気づいたように目を開けたラグを見て、私はムっとする。
「もしかして、今寝てた?」
「ね、寝てねーよ!」
「聴き入っていたんだよね?」
突然背後で聞こえた優しい声音にびっくりして私は振り返る。
泉の上に、笑顔で佇んでいたのは予想通りの人物。
「エルネストさん!」
「……野郎っ!」
私の歓声と、ラグの憎々しげな声とが重なる。
彼は以前と変わらず、にっこりと微笑んでくれた。