My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

「とても素敵な歌だったよ、カノン」

 久し振りに聞く彼の声に、一度緩んでしまった涙腺がまた溢れそうになる。
 彼の笑顔とその声はいつも私を不思議と安心させてくれる。
 まだ数回しか会っていないのに、なんでこんなにも胸があたたかくなるのだろう。
 それは、歌っているときの気持ちに良く似ている気がした。
 彼は微笑み続ける。

「さすがは銀のセイレーン。……出来るなら、ずっと聴いていたいくらいだ」

 ――そうだ。
 もしさっきの歌が、“銀のセイレーン”として何らかの効果をもたらしたのだとしたら、それはきっと私自身にだ。
 故郷を想う歌によって、きっと私は軽くホームシックにかかってしまったのだろう。
 だからさっきから、こんなにも泣きたい気分になっているのだ。

「あ、ありがとうございますっ」

 私は今にも崩れてしまいそうな顔を隠すように、深く頭を下げる。
 今泣いたら止まらなくなってしまう気がした。
 私はぎゅっと目を瞑って下唇を噛む。

「ねぇ、ラグ。君もそう思っただろう?」
「うるっせぇ! ふざけたこと抜かす前に、いい加減てめぇがどこに居るのか教えやがれ! 言うとおりにこうして大陸を出てやったんだ!」

 あの時と同じでラグの剣幕は凄まじい。
 ……お蔭で、零れそうになっていた涙は引っ込んだけれど。
 なのに、言われている当の本人は全く動じていないよう。
 それどころか、彼は可笑しそうに小さく肩を震わせた。
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