My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
真剣なその眼差しに顔の熱が上がる。
ライゼちゃんにも同じようなことを言われたけれど、また違う。
なんて答えて良いのかわからない。
……とにかく、全身が熱かった。
だが、横からの舌打ちに私はびくりと肩をすくめる。
「どいつもこいつも……っ! こいつに何が出来るってんだ!? アホらしい! そんなことで変わる世界なら、とっくに変わってる!」
憎々しげな怒鳴り声。
(ラグ……?)
慣れてきたと思っていたのに、私は久し振りに彼を、――ラグを、“怖い”と思った。
エルネストさんがふぅと溜息を吐く。
「ラグ、カノンが怯えているよ」
「!」
瞬間、ラグと目が合った。
でも彼はすぐにその視線を外すと、もう一度小さく舌打ちをした。
「っと、そろそろ時間だ。僕は消えるよ。……カノン、頑張ってね」
「は、はい!」
なんとか、返事をすることだけは出来た。
彼はそんな私ににっこり微笑んで、いつものようにスーっと消えていってしまった。
――そしてまた、ラグと二人きり。
しかも、なんだかとても気まずい雰囲気だ。
「あ、ありがとう、ラグ。術のコツ教えてくれて。もう、戻ろっか!」
私が精一杯明るく言うと、彼はさっさと背を向け歩き出してしまった。
……こちらを見てもくれない。