My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
しかしまだ強風の中、しかも松明の火が消えてしまったのか辺りは真っ暗で姿までは確認できなかった。
返事をする間も無くそのまま腕を引っ張られ、私は恐怖ですくむ足を叱咤しどうにか走り出す。
「狼狽えるな! 娘が逃げた!」
先ほど一番偉そうだった兵士の十分に狼狽えた声が背後で聞こえた。
とりあえずあの場は切り抜けられたみたいだ。だがまだ気は抜けない。
感覚でだけだが、おそらく今私たちは城の裏手に向かっている。
何だかわからない違和感を覚えながらも私は必死で走る。
いつまでこの風は吹き続けるのだろうと思ったそのとき、ふっとそれは止んだ。
ゆっくりと目を開けていきまず映ったのはブゥの後ろ姿。そして、
(え?)
今自分をひっぱっている手を辿り私は目を見開く。
違和感の正体。自分を誘導しているのは子供――少年だったのだ。
後ろで一つにまとめている黒髪が尻尾のように揺れている。その頭上を相棒だと言うブゥが飛んでいた。
驚きとともに私の中に妙な安堵感が広がる。
子供だからといって頼りないとは思わなかった。現にこうして助けてくれたのだから。
「あ、ありがとう!」
走りながら助けてもらったお礼を言う。だが、
「礼言ってる暇があんなら歌えよ! 銀のセイレーン!!」
変声期前の高い声で厳しく言い返されてしまった。
返事をする間も無くそのまま腕を引っ張られ、私は恐怖ですくむ足を叱咤しどうにか走り出す。
「狼狽えるな! 娘が逃げた!」
先ほど一番偉そうだった兵士の十分に狼狽えた声が背後で聞こえた。
とりあえずあの場は切り抜けられたみたいだ。だがまだ気は抜けない。
感覚でだけだが、おそらく今私たちは城の裏手に向かっている。
何だかわからない違和感を覚えながらも私は必死で走る。
いつまでこの風は吹き続けるのだろうと思ったそのとき、ふっとそれは止んだ。
ゆっくりと目を開けていきまず映ったのはブゥの後ろ姿。そして、
(え?)
今自分をひっぱっている手を辿り私は目を見開く。
違和感の正体。自分を誘導しているのは子供――少年だったのだ。
後ろで一つにまとめている黒髪が尻尾のように揺れている。その頭上を相棒だと言うブゥが飛んでいた。
驚きとともに私の中に妙な安堵感が広がる。
子供だからといって頼りないとは思わなかった。現にこうして助けてくれたのだから。
「あ、ありがとう!」
走りながら助けてもらったお礼を言う。だが、
「礼言ってる暇があんなら歌えよ! 銀のセイレーン!!」
変声期前の高い声で厳しく言い返されてしまった。