My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「そこまでとは……」
セリーンが眉を顰め言う。
「ランフォルセから派遣されてきている者はどのくらいいるんだ?」
「ひとつの村に、一人か二人です」
「な、なら! その人たち追いかえせば!」
ラグとセリーンがいれば、そのくらい簡単に出来る気がしたのだ。
だが、私のその言葉に二人は困ったような表情を浮かべた。
「そんなことをしたら、この国の民はもっと酷い目に合う。……最悪、今奴隷として働かされている者も含めて、皆殺しだ」
「!?」
セリーンの低い声に、心臓をぎゅっと鷲掴みにされた気がした。
「今この国には戦える者がいないんだ。下手なことは出来ない。……私達もここにずっといるわけではないのだからな」
「ご、ごめん。私……」
ものすごく軽率なことを言ってしまったのだと今更ながら自覚して私はライゼちゃんに謝る。
でも彼女は優しい笑顔で首を振った。
「いいえ。このような国に無理を言って来ていただいて、謝らなくてはならないのはこちらの方です」
――私に、何が出来るの……?
昨夜、歌のコツが掴めた気がして喜んでいた自分が、急に馬鹿みたいに思えてきた。
倒れずに歌えたことが一体何になるというのだろう。
「私、ちょっと外行って来るね!」
「カノン?」
心配そうなセリーンを振り返り言う。
「ほら、今日早速歌うかもしれないし、練習しとこうと思って!」
心の動揺を悟られないように笑顔を作って、私はひとりテントを出た。
……ライゼちゃんの顔を見ることが出来なかった。