My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
昨夜のことを思い出し、私は気まずい思いで笑顔を作る。
「ラグ! お、おはよう」
だがその視線はブライト君の方へ向いていて。
「オレたちは頼まれてここまで来たんだ」
「ライゼ様に、ですか?」
ブライト君は訝しむように眉を顰めラグを見返した。
身長差があるために見上げる格好になっているブライト君を見て私はハラハラする。
「そう! だから、私が説明するよりもライゼちゃんに訊いたほうが分かりやすいと思うんだ」
フォローになったかどうか分からないけれど、とりあえず二人の視線が外れてほっとする。
「そうですか、わかりました」
ブライト君は私達に一礼してテントの方へと足を向けた。
「……お前は、つい昨日自分を殺そうとした相手とよく平気で話が出来るな」
言われて横を見上げると、心底呆れたようなラグの顔。
「だ、だって昨日のは誤解だったんだし」
するとラグは大きく溜息を吐いてブライト君の後姿に視線を移した。
と、彼の長い髪と一緒に黒い影が揺れる。
「あ、ブゥちゃんと戻ってきたんだね」
「あぁ」
「――き、昨日はありがとうね」
「…………」
答えはない。やはりまだ昨夜のことを怒っているのだろうか。
私は俯きぎゅっと拳を握る。
「ライゼ様、おはようございます。ブライトです」
ブライト君がテントに向かい声を上げるのを聞きながら、私は小さく言う。
「私、この国のこと何も分かってないくせに、簡単なこと言って……ごめんなさい」
するとまた溜息。
「で?」
「……え?」
顔を上げドキリとする。
こちらの気持ちを全部見透かしたようなラグの青い瞳。
「どうすんだ? とっとと諦めてこの国を出るか」
その言葉にドクンと心臓が鳴る。
突き刺すようなその視線に全身が強張る。