My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
ひょっとしたらこうして子供達だけがここに呼び出されることは今まで無かったのかもしれない。
(もしかして、怒られるとか思ってたのかな)
まるで職員室に呼び出された生徒のような皆の反応に思わず笑みがこぼれる。
と、ライゼちゃんが私の方を向いた。
それにつられるように子供達の視線が私に集まった。
顔が赤くなるのを感じながらも私は精一杯の笑顔を彼らに向ける。
でもその笑顔に応えてくれる子は一人もいなかった。
おそらく一目でよそ者とわかる私を子供ながらに警戒しているのだろう。
他国からの支配を受けこんな身体になるほど酷い生活を強いられているのだ。無理も無い。
「この方はカノンさん。私がお願いしてこのフェルクに来てもらいました。とても優しくて素敵な方よ」
そんな紹介を受けて気恥ずかしくなりながら、私も思い切って口を開いた。
「初めまして! 私、華音って言います。よろしくね」
すると、ライゼちゃんのお墨付きが効いたのか数人が私に向かって頭を下げてくれた。
そんな些細なことに胸がほんわか温かくなる。でも、
「今日は皆にカノンさんの歌を聴いてもらおうと思っています」
ライゼちゃんがそう言った瞬間、子供たちは不安げに顔を見合せた。
彼女の口から「歌」という単語が出たことに皆戸惑っている様子だ。