My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「大丈夫。私はもう聴いたけれど、歌ってとても素敵なものよ。だから皆にも聴いてもらいたいの」
微笑を浮かべ言うライゼちゃん。
「カノンさん、お願いします」
ライゼちゃんに呼ばれ子供達の前に出ようとしたときだ。
遠のいていく足音に気づき振り向くと、ラグがこちらに背を向け森の方へと歩き出していた。
「ラグ、どこ行くの?」
「……昨日の泉」
「え!? 何で、歌は?」
「オレはいい」
こちらを振り向きもせずそう言い残し、彼は森の中へと消えてしまった。
――そんなに汗をかいてしまったのだろうか?
これから歌う私にとって彼の不在はかなり心もとなかったけれど、仕方がない。
私は腹を括って再び子供達の方を振り返った。
「楽しみにしているぞ」
そんなセリーンの声に後押しされながら私は皆の前へ進み出る。……歩き方が少しギクシャクしてしまったかもしれない。
集まった視線はやはり一様に不安げで。
私はそんな子供たちに精一杯の笑顔で言う。
「えっと、じゃあまず、みんな座ってもらっていいかな?」
すると、子供達はゆっくり地面に腰を下ろし始めた。
皆が座ったのを確認して、私は一度息を整えてから続けた。
「みんな歌を聴くのは初めてだと思うんだけど、歌ってね、一人で歌ってもあんまり楽しくないんだ。だから今日はみんなにも一緒に歌ってもらおうと思ってます!」