My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
私は今 空へと舞い上がる
高く 高く もっと高く
この壁を越えて あの塔よりも高く どこまでも高く
大きなこの白い翼 羽ばたかせて
幼い頃から歌を歌うこと、そして、歌を作ることが好きだった私。
天使のような純白の翼が生えた自分をイメージして、“飛びたい” そう願いを込めた即興歌を、私は歌った。
兵士たちが驚いたように口を開け私を見る。
少年も、ブゥまでがこちらを振り向き目を見開いている。
一度出した歌声は止まらず、私は更に歌い続ける。
こんな状況下で自分でも不思議だったけれど、とても気持ちが良かった。
背中に熱を感じた。まるで、本当に翼が生えたみたいだ。
飛びたい。――目を瞑り祈るように、ただ強く願う。
私は今 空を駆けていく
遠く 遠く もっと遠く
この山を越えて あの海よりも遠く どこまでも遠く
大きなこの白い翼 羽ばたかせて
そのとき奇妙な感覚にとらわれた。身体が消えていくような、そんな違和感。
不安を覚え目を開けて、私はその違和感の正体を知る。
――私、浮いてる!?