My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
逆に問われ瞬間戸惑う。セリーンの瞳は真剣だ。
私はゆっくりと頷く。
「うん。私の住んでいる国は今は平和だけど、私が生まれるずっと前は戦争してたし……。今も色んな国で争いは起きてる」
「そうか……。このレヴールでは5年前に長かった戦争が終わった。今では魔導大戦と呼ばれているが」
魔導大戦。
その名には覚えがあった。
「永遠に続くと思われていた戦争が、魔導術士達の出現によってあっけなく終わりを告げた。多くの犠牲と共にな。……それほどまでに、奴等の力は圧倒的だった」
その頃を思い出しているのか、セリーンの瞳はどこか遠くを見つめているように見えた。
彼女はその戦争中運良く生き残ったのだと、前に言っていた。
私はゴクリと唾を飲み込み更に訊く。
「ラグも、やっぱりその戦争に……?」
「だろうな。あのストレッタの出身ならほぼ間違いない。あそこまでの術士は中でも稀だろうからな」
……5年前に終わったという大戦。
ということは、今19歳だというラグは14の頃にはすでに戦場に立っていたことになる。
「ストレッタってどういうところなの? 魔導術士の養成機関って言ってたよね?」
「ストレッタは悪魔を生み出しました」
その声はセリーンのものではなかった。
私は驚いて視線を移す。
「ライゼちゃん!」
「ストレッタによって生み出された魔導術士達は、この神聖な力を戦争に……人殺しに使ったんです」
先刻あんなに笑っていた少女の顔が、今は怒りと悲しみに溢れている。
空腹のはずの胃がズンと重たくなる感覚。
人殺し。……なんて恐ろしい、嫌な言葉なのだろう。
――オレ達はこの特別な力を、……戦争で使った。
ふいに、昨夜そう言ったラグのあの表情が蘇る。
あの時とっさに口から出たおばあちゃんの言葉が、今は出ない。