My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「ねぇ、セリーン。セリーンは、ラグのこと嫌いなんだよね?」
「……あぁ」
「それって、ラグが魔導術士だから?」
恐る恐る訊く。
セリーンはそんな私を見下ろしふっと笑顔を見せてくれた。
「いや、単に奴の言動がいちいち癇に障るだけだ。あの子の方になら、何を言われても可愛いのになぁ」
釣られて、つい私も笑ってしまった。
「奴が恐ろしくなったか?」
優しく問われて、私はゆっくりと首を横に振る。
「ううん。……というか、初めて会ったときからラグは怖かったし、今ようやく慣れてきたとこかな」
笑いながら言うと、セリーンは私の頭を優しく撫でてくれた。
「さて、では飯にするか」
「うん!」
そうして、私たちはライゼちゃんのいる部屋へ移ったのだった。
ストレッタのこと、そして魔導大戦のこと。
もっと知りたいような、これ以上知るのは恐いような……。
でも、先ほどのセリーンの低い声音。
ライゼちゃんが一瞬見せた表情。
そして、昨夜のラグの……。
――私は、当分この二つの言葉は口にしないと決めた。
ライゼちゃんは食事中終始笑顔だった。
彼女の作ってくれた料理は、やっぱりとても美味しかった。