My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
と、ラグが抑揚の無い低い声で続けた。
「大人とガキとは違う。生きてきた長さも、現実を見てきた長さも、な」
その淡々としたセリフに私は言葉を失う。
それは、つい先ほど自分が考えていたこと。
でもそれを認めてしまったら、ライゼちゃんの願いを今更否定することになってしまう。
「想像してみるんだな。下手すりゃルバートの二の舞になるぞ」
途端、一人追いかけられたことを思い出し体に小さく震えが走った。
「で、でも、ライゼちゃんが大丈夫だって言ってくれれば、きっと皆信じてくれるはずだよ!」
――そうだ。この国にとってライゼちゃんの存在は大きい。
きっと彼女の言うことなら皆信じるはずだ。
今日のように、歌は素敵なものだと最初に皆に言ってくれれば……。
だが、ラグは肩をすくめ嘲るように口の端を上げた。
「どうだかな。神導術士ったってまだガキじゃねぇか。どれだけ信頼されてるんだか怪しいもんだな」
「そんな言い方……っ! ライゼちゃんあの歳でこの国の皆のために凄く頑張ってるんだよ!」
ブゥが私の手から逃げるように飛び立つ。いつの間にか手に力が入ってしまっていた。
ライゼちゃんの頑張りを馬鹿にされた気がして、どうしようもなく腹立たしかった。