My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
やっと、こうして強く手を引かれている理由がわかった。
だから、明日私たちが出て行ってしまうと知ってラウト君は焦っているのだ。
私にとってはとても嬉しいことだけれど、この二人だけで誰にも告げずに村へ行ってしまって大丈夫だろうか。
確か、村にはランフォルセの者が見回りにやってくると言っていた。
それに一目見てよそ者だとわかってしまう私を村の人たちはどう思うだろうか。
同時、ラグの言葉が思い出される。
――想像してみるんだな。下手すりゃルバートの二の舞になるぞ。
……やはりこの二人だけではまずい気がした。
「ねぇ、ラウト君。やっぱり一度戻ろうよ! 行くならちゃんとライゼちゃんに話してからの方が」
「ダメ! 姉ちゃんには内緒なんだ!」
それは切羽詰ったような声。
「内緒?」
「…………」
そこで、ようやくラウト君の足が止まった。
今まで引っ張られていた腕もゆっくり離される。
「内緒って、どういうこと?」
もう一度私は訊いた。
とても仲が良さそうに見えた姉弟。隠し事があるなんて、なんだか信じられなかった。
ラウト君は俯きながらもゆっくりと答えてくれた。
「……本当は、僕、村へは行っちゃいけないんだ。姉ちゃんのことがバレたら大変だからって。でも僕、内緒で時々村に行ってたんだ」