My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「その友達に会いに?」
「うん。だって、初めて出来た友達なんだ。……でもあいつ、クラールって言うんだけど、最近元気無くってさ。だから、お姉さんのあの歌を一緒に歌ったら絶対元気が出ると思うんだ。だからお願い、一緒に来てよ!」
再び私の目をまっすぐに見て言うラウト君。
私はその強い瞳に、色は違えどお姉ちゃんと同じものを見た気がした。
「うん。わかった」
「本当!?」
「でも、その子にはすぐに会えるの? ほら、あんまり私達が帰るの遅いと皆心配するし、ライゼちゃんにもバレちゃうかもしれないでしょ?」
「うん! それは平気! だってクラールの家、この森を出てすぐだから」
「そっか。でも、その村まであとどのくらい掛かるの?」
「あと少しだよ! ついてきて!」
言ってあっという間にまた走り出してしまったラウト君に私は慌てて声を掛ける。
「ちょっと待って! その、やっぱり手引いててもらっていい? 暗くて良く見えないんだ」
苦笑しながら手を出すと、ラウト君は笑顔で頷きその手を取ってくれた。
――もしかしたら、セリーンが私の帰りが遅いことを心配しているかもしれない。
ちょっとラグの所に行って来る、そう言って出てきてしまったままだ。
セリーンのことだから、また私とラグが……なんてことを考えているかもしれないけれど。
どちらにしても、私たちが揃っていないことに誰かが気づくのは時間の問題だろう。
でも、今この手を振り払うことは出来なかった。
……ラグは明日本気でこの国を出るつもりでいる。
なら私は、ライゼちゃんの愛するこの国の人たちのために出来る限りのことをしたかった。――この国を出る、その時まで。