My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「ラウト君とクラール君、前から時々会ってたんだって」
見兼ねて私は言う。
私の口から彼らの秘密をばらすことは少し気が引けたけれど、この状況ではそうも言っていられない。
「今日、子供達が集まったときにクラール君がいなくて、ラウト君心配になって、それで私と一緒にここまで……」
私のたどたどしい説明を、ブライト君は複雑な表情を浮かべながらも真剣に聞いてくれた。
「そう、でしたか」
「ねぇ、ブライト、クラールどうしちゃったんだ? まさか、死んじゃったりしないよな?」
先ほどよりいくらか落ち着いた声でもう一度、ラウト君は訊く。
でもブライト君は辛そうに顔を歪め、すぐには答えない。
「ブライト?」
「……彼にはもう、生きる気力がないのです」
「え?」
クラール君に視線を向け、ブライト君はゆっくりと続ける。
「ここ5日程、食事を一切口にしません。水も、ほとんど飲んでくれません。このままだとあと3日、持つかどうか……」
それを聞いたラウト君はブライト君から力なく手を離し、夢でも見ているかのような虚ろな表情で友達を見つめた。
「そんな……。でも一週間前にラウト君が会った時にはまだ元気だったって」
「10日程前、彼の父親が亡くなったと言う知らせが、彼に届いたのです」
ハっとラウト君の表情が強張った。
「それから、彼は見る見る元気を無くしていきました」
小さな拳を強く強く握るラウト君を、私はただ見つめることしか出来ない。