My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
いつの間にか両脇にはクラール君の家と同じ木造の家々が並んでいた。
どうやら村の中心部の方まで走って来てしまったようだ。
(と、ゆーか、二人とも、足速すぎ……っ)
私はすでに息切れを起こし、足はふらふらの状態だった。
ブライト君との距離がどんどん開いていく。でもおかげで彼とラウト君との差は縮まっているように見えた。
と、そんな時だ。
「ぅわっ!」
石か何かに躓き、そのままの勢いで私は思いっきり転倒する。
顔を庇う余裕もなかった。
「いったたた……っ」
どうにか起き上がれたものの、薄着だったために腕も足も、そして顔面も擦り剥いてしまった。
でも今はそんなこと気にしていられない。
顔を上げ先を見るが、……すでに遅く、二人の姿は闇に溶け込み見えなくなってしまっていた。
(あぁ~、なんでこー私って……)
がっくり肩を落とす。
途端、気付いたようにドっと噴出してくる汗。
――どうしよう。
とりあえず全身についてしまった土を払いながら考える。
彼らが見えなくなってしまっては、このまま追いかけるのは無謀な気がした。
最後に彼らを見たとき、かなり距離が縮まっているように見えた。
ブライト君ならきっとラウト君に追いつき、そして説得して戻ってきてくれるだろう。
……そう、信じるしかない。
でもだからと言ってこの場でただ一人待っているのは心細かった。
それに一目でよそ者と分かる私が、こんな村の中心にいるのはマズイだろう。
現にすぐそこに灯りのついた家がある。
(戻ったほうが、いいよね)
幸い家々の並びが目印となり、クラール君の家までなんとか一人で戻れそうだ。
そう思って引き返そうとした、そのときだった。
「あ~ん? 何でこんなトコに若い女がいんだぁ?」
「!!」
そんな間延びした声とともに目の前に現れた人影に心臓が飛び上がる。