My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「へっへへ、この際、幻覚でも何でも構わねぇさ」
男の私を見る下卑た視線と息が詰まるような酒の臭いに、全身が総毛立つ。
すぐさま逃げ出そうとするが、腕を捻り上げられ小さく呻くことしかできない。
そうしている間にも私を押さえつけている手とは逆の男の手が私の服に掛かった。
男が何をしようとしているのかわかってしまって、なのに助けを求めたくても余りの恐怖に声が出てくれない。
どちらにしても村の中心部から離れてしまったせいで近くに人の気配は無かった。
絶望感と嫌悪感で目に涙が滲む。
(誰か……!!)
ぎゅっと目を瞑った、そのときだ。
「ぎゃあ!!」
そんな悲鳴と共に、押さえつけられていた腕が解放された。
私は恐る恐る目を開ける。
――男の額に、白く丸い物体が張り付いていた。
「ブゥ……?」
そしてその小さな体が離れると同時、ドカっ! と言う音と共に男の巨体が吹っ飛んだ。
「!!」
数メートルほど飛んだ男は仰向けに転がりピクピクと痙攣を始めた。
以前、同じような状態になった兵士達を思い出す。ブゥの攻撃が効いているのだ。
でもそんな男の横に再び長身の人影。
「こっの下衆野郎がっ!」
「っぐ!?」
耳慣れた怒声と共に、男の横腹に蹴りが入る。
「……ラ、グ?」