My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
ラグは困ったように一度大きく溜息をつき、
「ったく、泣くくらいだったら一人で勝手に行動するな! 前にも言っただろうが!」
……結局、怒鳴られてしまった。
「だって、っ、ラグが……っそれに、ラウト君が……ブライト君も、二人ともすっごく足速くて」
「はぁ?」
我ながら支離滅裂なことを言っていると思ったが、まず何から説明していいのかわからなかった。
話したいことが山ほどある。
泣いている場合ではないと、私はもう一度気を引き締め涙を拭ってラグを見上げた。
「ごめんね、もう平気! えっと、セリーンは? ……そうだ、ライゼちゃんとヴィルトさん心配してなかった?」
「あの親子は知らねぇが、セリーンの奴もこっちに向かってるはずだ。……とにかく早く戻るぞ。こいつが目を覚ますとまた厄介なことになる。ほら、もう立て」
ラグは転がっている男を一瞥すると、私の腕を取りゆっくりと立ち上がらせてくれた。
少しふらつくもののどうにか立てた私はもう一度男を見下ろす。
「この人、この国の人じゃないよね」
「あぁ、どう見たってランフォルセの奴だ」
汚いものでも見るように彼を見下ろすラグ。
――やはりそうだ。
おそらくラウト君が会おうとしていた人物。
「まずかったかな……」
「あ?」
「だって、私顔見られちゃったし、それにこんな……。起きたらフェルクの人達に酷いことするんじゃ」
言いながら事の重大さに気付く。