My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
 そんなことを考えたのがいけなかったかもしれない。急に喉の奥がどうしようもなく痒くなってきた。

(まずっ……!)

 限界だった。
 私は空中で激しく咳き込んでしまった。

 ガクンっ

 歌が止まった途端、案の定私たちは落下を始めた。

「きゃあああぁぁ!!」

 歌うことを完璧に忘れた私は、ただ絶叫を上げるしかできない。
 いや、もしかしたら声すら出ていなかったかもしれない。
 重力に従い上空ざっと20mからの急降下。
 助かるはずが無い。

(死ぬんだ、私)

 あまりの恐怖と強烈な落下感で次第に薄れていく意識の中、私は今も腰に抱きついてる少年に「ごめんね」と謝った……。

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