My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
と、外からぼそぼそと小さな話し声が聞こえてきた。
「ここにカノンがいるのか?」
「わかりません、でも、ここしか……」
その声にラグが肩の力を抜いた。
私もすぐに立ち上がって入口に向かう。
「セリーン! ブライト君!」
こちらから顔を出すと、外の二人はとても驚いた顔をした。
そしてすぐにほっとしたように笑ってくれた。
更には。
「ラウト君!」
そう、ブライト君の傍らに、ラウト君が酷く気落ちした様子で立っていたのだ。
ブライト君に説得されて戻ってきてくれたのだろう。よく見れば二人とも汗だくだ。
「すみませんでした! ラウト様を追いかけるのに夢中で、――っ! ラグ、様もいらしてたんですね」
中に入ったブライト君はラグを見つけるなり急に表情を硬くした。
ラグは何も応えず、ただ彼を見下ろしている。
この二人は……というよりブライト君は、やはりまだラグを信用していないのだろう。
それが見ていてよくわかる。ラグもそれに気付いていないわけがない。
私はそんな二人の視界にわざと入るようにラウト君の前で腰をかがめ笑いかけた。
「良かった。心配したんだよ」
するとラウト君は私の顔をちらりと見上げ、ごめんなさいと呟いた。
可哀想なくらいに落ち込んでいる彼に私はゆっくり首を振った。
「ううん、ラウト君の気持ちわかるもん。皆、わかってるよ。……無事で本当に良かった!」
「お前が言うな」
背後でぼそっとそんな声が聞こえた気がしたけれど、
「カノン、顔を怪我しているじゃないか」
というセリーンの少し怒ったような声に私は顔を上げた。
「あ、さっき転んじゃって。でも大したことないよ!」
「しかし、痕が残ったら事だぞ。早く手当てしなくては……。あ~可愛い顔が台無しじゃないか」
「あ、ありがとう! じゃあライゼちゃんのトコに戻ったら……あ! ライゼちゃんたち、心配してなかった?」
「あ? あぁ――」