My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
聞くと、やはり私とラウト君がいないことに一番に気付いたのはヴィルトさんだったそうだ。
そしてそれを知ったライゼちゃんは酷く取り乱し、すぐさま捜しに出ようとしたらしい。
当然だ。たった一人の弟が行方不明になったら、家族思いの彼女なら尚更じっとしていられないに決まっている。
だがヴィルトさんとセリーンとでなんとかそれを宥め、セリーンだけがこうしてここに来たということだ。
ラウト君の落ち込みようを見ると、きっと彼もそれを聞いたのだろう。
私も、取り乱したライゼちゃんを想像してもう少し考えて行動すればよかったと、今更ながらに後悔した。
「でも、どうしてここだってわかったの?」
「ブゥの鼻のおかげだ。それをあの娘が聞いたんだ」
「ぶぅ!」
自分を褒められたのがわかったのか、ブゥは得意げに空中をくるりと旋回した。
だがそこでセリーンは急に半眼になってラグを見据えた。
「まぁ、それを聞いてすぐさまその男が走り出したお蔭で私は道案内を無くしこうして遅れたわけだが」
「え?」
「うるせぇ! おい、カノン! 早く歌うんじゃねーのか!!」
ラグに怒鳴られて私は慌てる。
「そうなの! 私今歌おうとしてたの。彼を、助けたくて」
言ってクラール君に視線を向けると、セリーンの表情が強張りその瞳が真剣な色に変わった。
私は皆にクラール君を歌で、銀のセイレーンの力で元気付けようとしていたことを話した。
すると、それまで俯いていたラウト君がぱっと顔を上げた。
「僕も一緒に歌いたい!」
「そう、だね。うん。ラウト君も一緒なら、絶対にクラール君元気が出るよ!」
そう言うと、やっとラウト君にいつもの笑顔が戻った。
「ブライトも一緒に歌おう!」
「え!? わ、私もですか、ええと……」
困ったように視線を向けられ、私は笑顔で答えた。
「うん、ブライト君も一緒に歌おう! 昼間の歌、覚えてるでしょ?」
「……わ、わかりました。精一杯やらせていただきます!」
拳を強く握り言ってくれるブライト君。
ラグとセリーンにはなんとなく頼み辛くて言えなかったけれど、二人とも、私達を止めることはしなかった。
今は、見守っていてくれるだけで心強い。
そして私達3人はあの歌を、皆で作ったあの遊び歌を歌いはじめた。