My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
歌のことは二の次だ。私たちはあのカルダという男のことを中心に話を進めた。
ライゼちゃんもブライト君と同じく、カルダは目を覚ましたらまず私を捜すだろうと言った。
ラグもカルダを蹴り飛ばしたりしているが、あれはあの男がブゥの攻撃によって昏倒した後。
カルダに顔を見られているのは私だけなのだ。
あの男ならきっと仕返しを考えるだろうと、ライゼちゃんはもう一度不安そうに私を見た。
――カルダは本当に最低な奴で、この国に派遣されたことに不満を感じているらしく、その腹いせに村人に嫌がらせしたり暴力を振るったりしているのだという。
おそらく先ほど村でうろついていたのも、そのためだったのではないかとライゼちゃんは怒りに声を震わせた。
そして私が見つからないとなったら村の人に八つ当たりをするだろうと、そこまで容易に予想できてしまうような人物だった。
私は間近に迫ったあの男の顔を思い出し、怒りと嫌悪に吐き気すら覚えた。
「ブライト君、本当に大丈夫かな……。そういえば、ブライト君は見つかっても平気なの? 他の男の人みたいに他の国に連れて行かれたりしない?」
体力のある若者は奴隷として各国へ送られたという話を思い出したのだ。
確かにブライト君は見た目ひょろんとしているが、他の村人に比べると健康そうであるし見つかったらマズイのではないだろうか。
それに答えてくれたのは笑顔のラウト君だった。
「大丈夫だよ。ブライトはお医者さんだから」
「へ?」
私は思わず気の抜けたような声を出してしまっていた。
するとライゼちゃんはそんな私の反応に小さく笑って後を続けた。
「そうなのです。ブライトはこの辺りでは唯一医術の心得があるので、それゆえにこの国に残ることを許されているのです。フェルクの民が大勢病に倒れなどしては作物の収穫が減ってしまいランフォルセも多少は困るのでしょう」