My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
「皆さん……本当にありがとうございます」
ライゼちゃんが私達に向け深く頭を下げたときだ。
「僕も行きたい」
そう言ったのはラウト君だった。
彼も色々と思うところがあるのだろう。目を覚ましたばかりのクラール君のことも気になっているはずだ。だが、
「お前はブライトとここに残るんだ」
ヴィルトさんの低い声がそれを遮った。
「俺が行く」
「ヴィルト様!? わ、私は、大丈夫です! ライゼ様が行かれるのに守り役の私が行かないわけに、は……っ!」
焦って起き上がろうとしたブライト君だったが、すぐにその顔が苦痛に歪む。
内臓の傷は治ったとは言え、体中のいたるところに打撲の痕があるのだ。骨が折れている所もあるかもしれない。
そんな彼を止めたのは、ライゼちゃんの怒りを含んだ声だった。
「これ以上無茶をするようなら守り役を解任しますよ、ブライト」
「そ、そんな!」
途端なんとも情けない顔になったブライト君に、ライゼちゃんは寂しそうに微笑んで続けた。
「守り役なんて元々私には必要ないのよ。それよりも貴方は私にとって大事な幼馴染だということを忘れないで。……これ以上、心配させないでちょうだい」
「ライゼ様……」
ブライト君の顔がほんのり赤くなった気がしたのは、私の気のせいではないだろう。
完全に納得したわけではないだろうが、ブライト君はそれ以上何も言わなかった。
ラウト君も、もう一度お父さんに言われて渋々ながら納得してくれたようだった。
そうして、私たちは再び村へ行くことになった。
ライゼちゃんとヴィルトさんは村の皆の元へ。
そして、私達3人と1匹はカルダの元へ――。