My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
――ざっ、ざっ。
鳥達の声が高く響く森の中を私達は進んでいた。
木々の天井からは陽の光がいくつもの筋となって地面に降り注いでいて、その幻想的な風景はつい数時間前に入った不気味な闇の森とはまるで別の場所のようだった。
しかし、まだ10分ほどしか進んでいないというのに、蒸すような暑さですでに服の下が汗ばんできていた。
(こんなに天気良いのに……)
ライゼちゃんが森に入る直前、今日は昼頃から嵐になると言ったのだ。
木々の隙間から見える空は雲ひとつ無い晴天でやはり嵐が来るとは到底思えなかったが、神導術士であるライゼちゃんが言うのだから間違いないのだろう。
それが彼女の力なのだから。
彼女曰く、元々この国は降水量が多いらしい。
高温多湿。――私はふと学校で習った“熱帯雨林気候”という単語を思い出していた。
しかしこれは絶好のチャンスなのだ。
嵐のときならば流石にカルダも外には出ないはず。ライゼちゃんが村に行くなら、嵐の最中が最も安全だ。
だから私達は嵐が来る前に村の近くまで行き、雨が強くなってから村に入るつもりでいた。
だが念のため、容姿の目立つライゼちゃんは軽く変装していた。
変装と言ってもカツラやコンタクトがあるわけではないので、頭からローブのように布を羽織っているだけなのだが。
私とセリーン、ラグの3人は森を抜けてからライゼちゃん達と別れカルダの元へ向かうつもりだ。
そう。ラグはセリーンの言ったとおり、ぶつくさ文句を言いながらもついて来てくれていた。
振り返らなくても、最後尾にいる彼が今どんな顔をしているのか楽に想像できる。
(きっと、ものすっごく不機嫌な顔してるんだろうなぁ)
たまに聞こえてくる舌打ちを聞こえないふりして、私はライゼちゃん達の後ろを歩いていた。
ちなみにブゥはいつもの定位置でとっくにお休み中である。
「――あ、そうだ。ライゼちゃん」
「はい」
「あ、その、さっき術を使うとライゼちゃんの寿命がって……。私、昨日、」
振り向いてくれた彼女に、私は尻すぼみになりながら言う。